折井利雄さんの講演会より
私は、学校を卒業して10年間出版社にいましたが、10年ほど前から子ども達の活字離れが進んできたように思います。これは100%大人の責任です。大人自身も、活字離れが始まりました。トップへ
これからの時代を背負う子ども達に、できるだけ良い本に接してもらいたいと、(何が良い本か悪い本かという基準も難しいですが)浜松に戻って絵本の店を始めました。
うちの店は、原則として次の3点は店には置いていません。
ひとつはコミック、漫画のたぐいです。
個人的には嫌いではありませんが、刺激が強い本を置くと、そちらの方に目が行くので置いてありません。
二つ目は、名作と呼ばれる本のあらすじ本は置いていません。
長い間読み継がれている本は、TVかされたり、ゲームになったり、なじみが深いのでダイジェスト版になったり、ひどい本は原作とは違う筋になっています。あらすじが分かってしまう為、原作にであった時に読まなくなる時があるのです。
本来なら小学生の高学年ぐらいで読むと、本当の面白さや楽しさに出会えるのに、知っている為に読まずにすぎることが往々にしてあるので名作のあらすじ本は置いていません。
三つ目は、偉人伝、伝記物は置いていません。
織田信長でも、豊臣秀吉でも、徳川家康でも、誰を主人公にして取り上げるかによって、良い者になったり悪いものになったり、その人物評価が変わってくるので、伝記物はある程度時代背景や、その時の状況とかが把握できるようになってから読めば良いとおもっておいてありません。
さて、はじめに子ども達といつ頃から絵本を楽しんだら良いかという事ですが、最近はおなかにいるうちから読んであげる事が良いとされています。
といっても実際には、生まれて3ヶ月くらいまでは親が話し掛けてあげて、天気の良い日はお散歩などに連れていってあげれば良いですね。
生後10ヶ月くらいになったら、簡単な赤ちゃん絵本から与えて良いのではないでしょうか。
「いないいないばあ」とか、昔からある松谷みよ子さんの本がありますので、この辺で読みましょう。
*いないいないばあ(読み聞かせ)
こういった本から始めていって、1才半ぐらいから楽しめるようになると思います。
さて、誰でも本選びの時、悩んだり、迷ったりしますね。その時には図書館を利用すると良いですね。本の種類が圧倒的に多い野で、是非利用してください。
子ども達が気に入った本は、必ず良く読まれているはずです。それを読んで様子を見てから、いつも手に取れるように我が家に置くのも良いですね。それが、上手な本選びです。
もちろん図書館には、児童書専門の司書の方がいるでしょうし、幼稚園の先生にも聞いてみると良いでしょう。
1才半ぐらいになると、少しストーリー性のある本もわかるようになってきます。
もちろん聞く力も出て来ます。こどもたちに予測がつくような本、何度も話を繰り返している本、そんな本が読まれているようです。
*ぞうくんのさんぽ
*きんぎょがにげた
お子さんの年齢はこだわらなくって良いとおもいます。
出版社によって、この本は何歳向きとか書いてありますが、あくまで目安として捕らえて欲しいですね。私個人としては、限定させる事はしないで良いのではないかと思っています。
それから、2才から2才半ぐらいになると、それなりの生活態度とか経験が出て来ます。そのため、日常にある、自分の身近な出来事を題材にした本を喜ぶようになります。
想像力や、想像力を作っていく力が目覚しく発達する時期ですね。そういう年齢になると、
「親子でホットケーキをつくってみようかな」という話のような、生活に密着した話が喜ばれるようになります。
それから、想像力が広がってくるという意味でも、この年齢になると(男とか女とか分ける事はしてはいけないのですが)男の子と女の子の好みの傾向も、違ってきます。
これは、圧倒的に女の子に人気がある本です。
*私のワンピース
当然の事ながら、年齢が高くなるにしたがって、展開が広がったり、話が長くなったりしています。それでも、15分か20分あれば、3〜4冊は読んであげられます。そのくらい子どもに付き合ってあげると満足します。毎日毎日、必ず15分か20分、読まなくてはいけないわけではないので、忙しいでしょうけれども、読んであげてください。
ただ親が”何かの為になるから”と考えたり、目的意識を持って読んだりする場合は、子ども達が自分から読んだり、表現したり、感情を出したりする場合と異なってきます。
子ども達は小さい頃から、何かの為とか、幼児教育の競争の中で、義務感で読んでいる事を敏感に感じていると思います。
子どもは、親の姿勢をかなり敏感に察知していますので、是非お話の世界を親子で楽しんで欲しいですね。
我が家では、2番目の子どもが生まれる時、上のお兄ちゃんが3才でした。
どうしても、2番目が生まれると、下の子の方に手が行く為、上の子としては気分が穏やかでない。そんな時期で、上の子が、下の子を邪険にする事が会ったものですから、親ばかになって、我が子にそういう時期の子どもをテーマにした本を持っていきました。
息子にもこういう本を見せれば、お兄ちゃんになった気持ちを、理解してもらえるかと思ったのですが、全然駄目。
1回読んだら、「この本は嫌いだ」といって、もう2度と読みませんでした。
ここ十数年間、棚の奥に置いたまま読まれなかったこの本は、今でも鮮明に覚えている失敗策です。やっぱり、下心が会って与えるものは駄目だと、この時つくづくと感じました。
さらに、3〜4才になってくると、「三つ子の魂百まで」というように、その子その子の興味感心も、随分変ってくるようです。そのくらいになると、ある程度、話の展開がある本でも喜ぶとおもいます。
*どろんこハーリー
本当に、子どもが自由奔放に遊んでいる日常生活を書いた本で、おもしろいですね。
この他、昔から語り継がれている物語とか、世界の民話がありますね。
大人は、良く知っているので、つい読んであげたりしないものです。また、読んであげたいと思っても、昔から語り継がれて来た話は、耳から耳へと継がれてきているものなので、慌てて1才〜2才の子どもに読んであげなくても良いのではないでしょうか。
私は、3〜4才になってからで良いと思います。
口から口、耳から耳へと継がれてきたものは、絵本にすると、具体的なイメージを作ってしまうため、評価が分かれるところです。
例えば、昔話の内容が残酷すぎる事から、話の内容を変えてしまう事があります。
「3匹の子豚」「かちかち山」「あかずきん」とか色々あります。
本来の「3匹の子豚」は、おおかみが1匹目と、2匹目を食べちゃって、3匹目は逆におおかみを食べてしまいます。
お話はお話として、一定の年齢になれば、しっかり聞き取れるはずです。その中には、色々な英知などがこめられているからこそ、続いてきているのですから、それをはずしては駄目ではないかと思うのです。
そのため、話の内容を変えてしまったような本は、お店には置かない様にしています。
私達の子どもの頃は、自然の中で遊ぶ事が多かったですね。しかし、これからの子ども達は、親が積極的に、自然と接する機会を作っていかないと、具体的に見たり、遊んだりする事はなく、過ぎてしまうと思います。
自然とのふれあいの中で、お話の世界もより広がっていきますから、天気の良い日などは、子どもと一緒に、外へ遊びに出るのも良いですね。
*3枚の御札
徐々に子どもは、字を読まなければならない頃になってきますが、本を読んでいますと、自然の内に覚えてきます。それに、あまり早いうちに字を教え込むと、絵本の良さが死んでしまいます。
親の語る物語に耳を傾け、絵だけ追って話の展開を楽しむ事は、絵を見るという集中力が育つ事です。
早く字を覚えると、字を追う事で、絵の世界に集中しにくいようです。だから、字は早く覚えなくても良いと思います。ある程度の年齢になれば、興味も湧いてきて、関心を覚えて読めるようになるものです。
小学校に入れば「自分で本を読んでみなさい」というケースになってきますが、子ども自体が興味を持って読む場合には、最初に紹介したやさしい絵本を読むと良いでしょう。
読んでもらうのと自分で読むのは違いますから。
お話をしてもらって、お話を聞いてその世界を楽しむ事は、とても大切な事です。
中学生くらいになって、「本を読んで」という事は、絶対に無いし、あまり読まなかったからといって、大きくなってから読んであげる事もないのですから、今の内に是非読んでやってください。
どうぞ、肩の力を抜いて楽しんでください。
(1995年 ・講演会より)